中山獣医科病院ブログ

2018年6月 5日 火曜日

病気のペットはスキンシップで回復する? 

病気のペットはスキンシップで回復する? 「家の猫は元気に」「犬猫以外は?」、獣医師に聞く
 動物の「治癒力」に関して先日、SNS上などで話題になりました。犬や猫などのペットが病気になった時、「体をなでる」「抱っこする」などのスキンシップや声かけを増やし、一緒に過ごす時間を長くすることで動物の免疫力や自然治癒力が上がり、思いもよらぬ回復を見せることがあるようです。これについて、「わが家の猫も具合が悪くなった時、ずっとなでていたら元気になった」「スキンシップの力はすごい」「犬や猫以外にも効果あるのかな」など、さまざまな声が上がっています。
 飼い主とのスキンシップは、ペットの治癒力にどのような影響をもたらすのでしょうか。公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)広報担当理事で獣医師の吉田尚子さんに聞きました。
■アイコンタクトにもストレス軽減効果
Q.飼い主とのスキンシップは、動物の治癒力にどのような影響を及ぼしますか。
吉田さん「犬や猫をなでていると動物が気持ちよさそうにウトウトしてきて、その様子を見ながら、こちらも心地よくリラックスできることがあります。これは、スキンシップによる人と動物との相互効果です。ただし、動物と飼い主とで信頼関係ができている場合に限り、気軽にできる触れ合いと言えるでしょう。
特に犬の場合、強い信頼関係で結ばれる飼い主と、アイコンタクト(目線を合わせる)を取ることによって『オキシトシン』という、幸せを感じる"安らぎホルモン"が、犬にも飼い主にも分泌されることが研究で明らかになりました。オキシトシンは不安やストレスを軽減する作用があるほか、ストレスホルモンと言われるコルチゾールを減少させることもわかっています。
また、オキシトシンが出るほど、お互いの信頼関係がさらに強まるようです。このスキンシップによる"安らぎ効果"だけでも、ある程度疲労を軽減したり、抵抗効力を強めたりする効果があると思われます」
Q.ハムスターやインコなど、犬や猫以外のペットについてはどうでしょうか。
吉田さん「ハムスターやインコも、嗅覚や視覚などで感覚的に仲間を認識しているようです。鳥類の中でもオウムなど大型の鳥類に関しては、いわゆる『オウム返し』ではなく、会話のようなこともできる能力があるとさえ言われています。スキンシップは同じ方法とはいかないものの、信頼関係の下、声掛けや喜ぶ程度の優しいスキンシップは良い効果があると考えられます」
Q.実際に、ペットが病気やけがをした場合、飼い主はどのようなスキンシップを取るべきでしょうか。
吉田さん「病気やけがの治療を促すということになると、安全かつ有用な方法を取るために、一定の特別な知識や個々の症例に対する、専門家によるプログラムの検討が必要になると思います。飼い主であっても、病気によるストレスで緊張している時にかまったり、痛いところに触れたりすれば、怒ったり、かみつかれたりする危険もあります。
一般的には、理論に基づくドッグマッサージなどのセラピーを『ホリスティック・ケア』といいます。現代医学の補完療法として扱われることが多く、リラックスやリハビリ効果のあるドッグマッサージ、ローフード(生の食餌)、Tタッチ(神経に働きかけ、痛みの軽減、精神の安定などにも効果がある)、鍼(はり)や漢方などが含まれます。飼い主がある程度の知識を得ることで直接行えるものもありますが、獣医師などの専門家の技術に頼るものもあります。ドッグ・マッサージには、以下のような効果があります」
【ドッグ・マッサージの効果】
・皮膚表面から大脳を刺激し、リラックス効果を与える
・手の体温と摩擦による物理的な刺激で体温を上げ、血行やリンパ流を促す
・血圧が下がる
・筋肉や腱が柔軟になる
・消化管を刺激し、排せつを促進する
・毛づやが良くなる
■ただし、過剰なスキンシップは禁物
Q.ペットにマッサージを行う際のポイントは何ですか。
吉田さん「ペットのマッサージには、理論や経験に基づく幾つかのメソッドがあります。いずれもリンパや血流、東洋医学のツボなどに基づくラインに沿って、小さな円など独特の動きを使って行われます。強さや動きのペースも目的によって調整されます。
ペットの性格、犬か猫か、種類や年齢によって変わるので一概には言えませんが、一般的には、炎症または痛みを感じる部位を避けて、ペットの様子を見ながらなでてあげることが大切です」
Q.ペットとスキンシップを図る際に、気をつけるべきことは何でしょうか。
吉田さん「過剰なスキンシップは禁物です。人の場合もそうですが、スキンシップは個々の性格や体の状態に配慮して行う必要があります。やり方や部位、タイミングを誤れば、触れられること自体に緊張感やストレスなどが伴い、マイナスに働いてしまう場合もあるでしょう。
体のどこかに異常や痛みがある場合、なおさら『そっとしておいてほしい』と感じるかもしれません。何事も、過剰になれば良い効果も半減してしまうことが多くあります。病気やけがの治療の補助として行う場合は、何より、動物の状態をきちんと獣医師の診察などで把握し、アドバイスを受けながら適度に行うことが大切です」
<参考文献>
松江香子「ドッグホリスティックケア あなたの愛犬を癒す、心と体のマッサージ」(小学館、2005年)
リンダ・テリントン・ジョーンズ著「犬にT Touch」(アニマル・メディア社、2005年)
一般財団法人ペットフード協会監修「笑顔あふれる、ペットとの幸せな暮らし」(ペットとの共生推進協議会、2014年)
(ライフスタイルチーム



投稿者 中山獣医科病院